甲状腺外来

甲状腺とは

甲状腺は、頸部・気管の前面に位置し、身体の新陳代謝を高める作用を持つホルモンを分泌する臓器です。
甲状腺の疾患には、「甲状腺機能亢進症」「甲状腺機能低下症」「甲状腺の腫瘍」と大きく3つに大別されます。

甲状腺とは

甲状腺機能亢進症

症状について

  • 動悸 
  • 発汗
  • よく食べるのに体重が減る
  • 手が震える
  • イライラする
  • 下痢 

甲状腺ホルモンが過剰に分泌された状態ですので、上記の症状が認められます。甲状腺機能亢進症でのみ現れる症状ではありませんが、上記症状の内、複数の症状が当てはまる場合には一度検査を受けて頂くことをお勧めします。
甲状腺機能亢進症が未治療で放置された場合には、頸部の腫脹や眼球の突出(目が飛び出たような顔貌)が目立つ場合があり、特に眼球の突出については甲状腺機能亢進症に特徴的と言えます。

触診・血液検査・超音波検査などで診断を行います。

治療について

抗甲状腺薬の内服治療

基本的にはこの治療から開始します。甲状腺の機能を抑える作用を持ったお薬です。白血球減少・肝機能障害などの副作用が、内服開始から早い時期に生じることがありますので、治療開始からおよそ2ヶ月間の間は原則2週間毎の診察が必要です。

放射性ヨウ素内用療法

内服治療で効果が認められない場合に考慮されます。甲状腺の細胞はヨウ素を取り込むという性質があります。この性質を利用し、放射線を出すヨウ素のカプセルを内服し、甲状腺にそれを取り込ませ、甲状腺の内部から治療を行います。

手術療法

手術以外の治療で効果が認められない場合に考慮されます。

甲状腺機能低下症

症状について

  • 首が腫れている
  • 倦怠感
  • 体のむくみ
  • 寒がり
  • 皮膚の乾燥
  • 月経不順
  • 食欲は無いのに体重が増える
  • 便秘
  • やる気が出ない
  • もの忘

甲状腺ホルモンが少ない状態ですので、新陳代謝が低下することにより、上記の症状が認められます。甲状腺機能低下症の原因として最も多いものが慢性甲状腺炎(橋本病)と呼ばれるもので、甲状腺に慢性的な炎症が起こり機能が低下します。
もの忘れや抑うつのため精神科を受診したり、月経不順で婦人科で治療を受けたりという場合もあります。甲状腺機能低下症が原因であった場合には、薬物治療で甲状腺ホルモンが正常になれば症状は改善することが多いです。

触診・血液検査・超音波検査などで診断を行います。

治療について

甲状腺ホルモンが低下し、症状がある場合には甲状腺ホルモンの内服治療を行います。ごく軽度のホルモン異常の場合には昆布や海藻類に多く含まれるヨウ素の摂取制限のみで改善する場合もあります。甲状腺機能の低下が認められていない場合には定期的に経過観察をおこないます。頻度は少ないながらも、慢性甲状腺炎を背景に悪性リンパ腫という悪性腫瘍が出現することがありますので、定期的な超音波検査を行います。

甲状腺の腫瘍

主に健康診断などで首の診察を行った際に指摘されることが多いと思われます。または他の病気でCT検査などを行った時に偶然発見されることも珍しくありません。
腫瘍には良性腫瘍と悪性腫瘍(がん)がありますが、甲状腺がんのほとんどは予後が良好であることが知られています。

甲状腺がんについて

甲状腺がんは、乳頭癌・濾胞癌・低分化癌・未分化癌・髄様癌・その他の癌に大別されます。

乳頭癌

甲状腺がんの9割以上を占めます。リンパ節への転移が多い。予後は非常に良好です。

濾胞癌

甲状腺がんの5%前後を占めます。血行性に転移する性格を持ちます。転移がなければ予後は良好です。

低分化癌

乳頭癌と濾胞癌を合わせて高分化癌と表現し、後述の未分化癌との中間的な癌です。頻度は甲状腺がんの1%前後です。

未分化癌

週単位で頸部の腫瘍が大きくなる、予後不良の癌です。頻度は甲状腺がんの1%前後です。

髄様癌

上記4つの癌は甲状腺ホルモンを作る細胞から発生する癌ですが、こちらはそれとは違う細胞から発生する癌で、性質も異なります。3割は遺伝性と言われています。

リンパ腫

多くは慢性甲状腺炎(橋本病)を背景に発生します。慢性甲状腺炎と診断された場合は、年に1回程度、超音波検査での確認が大切です。

甲状腺良性腫瘍について

濾胞腺腫

がんである濾胞癌と区別が付きにくい場合がしばしばあります。大きさや経過で手術を検討することもあります。

腺腫様甲状腺腫

濾胞腺腫と合わせて甲状腺の良性腫瘍はこの二つがでほとんどを占めます。

治療について

甲状腺癌については、癌のタイプと進行度を精査し「手術治療」「放射性ヨウ素治療」「化学療法」「放射線療法」などを選択します。
甲状腺良性腫瘍については、基本的に経過観察を行いますが、癌との見分けが付きにくい場合や、腫瘍が大きくて美容的な問題が生じる場合に手術治療を検討します。