主な疾患
乳がん
乳がんは、女性が罹患するがんのうち、最も頻度の高いものとなっています。2018年の全国がん登録データによれば、その1年でがんに罹患した女性はおよそ42万人であり、そのうち乳がんと診断された方はおよそ9万4千人と、2割強の方が乳がんでした。現在、生涯の内に女性の9人に1人は乳がんに罹患するといわれています。
また、罹患する年齢も比較的若いうちであり、30代後半から徐々に増加し、40歳を超えるとさらに増え、60代後半までそのピークが持続します。
この時期は、お仕事が忙しい時期であり、子育てに奔走する時期であり、また子育てが一段落してようやく自分の時間ができる時期でもあります。
この時期に、乳がんになってしまうことは予防できずとも、検診や気になることがあれば診察を受けることで早期に発見されることにより、治癒を目指すことが出来る疾患です。
がん治療に対する効果判定の指標に「5年生存率」がよく用いられますが、乳がんの場合、がんが乳房内にとどまっている場合(リンパ節や他臓器に転移がない場合)の5年生存率は99%以上と非常に高い生存率を示しています。近くのリンパ節に転移があった場合でも90%という成績です。
ご自身の乳房について、何か気になる症状がある場合は早めの相談・症状が無い場合でも2年に1回は乳がん検診を受けましょう。

乳腺良性腫瘍
線維腺腫
乳腺良性腫瘍の代表格です。乳がんの好発年齢よりは若い時期に好発します。若い時期に存在していても気付かずに年齢を重ねてから検診や自分でしこりを自覚して発見される場合もあります。多くは超音波検査の見た目で判定することが可能ですが、形や大きさも様々であり、がんと見た目が似通うこともありますので、この場合は細胞診・組織診といった、腫瘍に針を刺し、細胞や組織を採取して顕微鏡での診断を行うこともあります。
葉状腫瘍
「がん」ではありませんが、一般的に「葉状腫瘍」と診断された場合は手術が必要となるものです。この葉状腫瘍は、「良性」・「境界型」・「悪性」にわけられ、「悪性」の葉状腫瘍は「がんと同じ振る舞い」、すなわちリンパ節や他の臓器に転移をすることがあります。良性か悪性かの判断は手術で切除した腫瘍を詳しく調べることで行うことが多いため、基本的には手術が必要となっています。(切除前の組織検査で、腫瘍の増殖能力がかなり低い(良性に近い)など明らかであれば経過観察を行う場合もあります)
のう胞
厳密には腫瘍ではありませんが、乳腺内に主に液体を入れた球状の袋が出来る事があり、これをのう胞と呼びます。大きさも様々で多発することもあります。基本的には放置して構わないものですが、中にはのう胞の中に良性腫瘍やがんが出現することもあります。
乳管内乳頭腫
乳頭からの分泌で発見されることもありますが、症状なく偶然超音波検査などで指摘されることもあります。良性の腫瘍ですが、ある種の乳がんと見分けがつきにくいこともあるため、必要に応じて組織検査を行うこともあります。
乳腺症
ホルモンバランスの乱れによる、乳腺に生じる様々な変化・症状の総称です。痛みやしこりを感じたり、乳頭から分泌物が出るなど症状は多岐にわたります。中にはがんと見分けがつきにくい所見がみられることがありますので、何か症状を感じたら、一度受診していただくことをお勧めします。
乳腺炎
多くは授乳中の方に生じることが多く痛みを伴いますが、あらゆる年齢の方に起こり得ます。検査でわずかに所見がある軽症のものから、乳房が赤く腫れ上がり発熱を伴うもの、化膿して膿瘍を伴うものまで様々です。軽症のうちに治療することが大切です。
主な症状
乳房のしこり
しこりの主な原因は、乳がん・良性腫瘍・乳腺症が代表的です。
乳房にしこりを感じる方は多くいらっしゃいます。検査を行い、何の異常も認められず「しこりのように感じているだけ」であったということも珍しくありません。それはそれで安心につながります。一方で本当に腫瘍が見つかる場合もあります。乳がんなのか良性腫瘍なのかの判断を行い、経過観察または追加の精密検査を実施したり、乳がんを強く疑う場合は適切な医療機関へ紹介を行います。
乳房の痛み
乳房の痛み=がんの症状。というわけでは決してありません。基本的に小さな乳がんができたために、そこが痛むということはありません。多くは乳腺症としての症状であることがほとんどです。しかし、痛みでの受診をきっかけに乳がんが発見されることもありますので、ひとまず痛みでも痛み以外でも気になる症状があれば相談することが大切です。
乳房の変形
乳房に左右差があることはさほど珍しくありませんが、明らかに片方が硬く張って大きくなっているなどは医療機関の受診を強くお勧めします。また、乳房の一部が「えくぼ」のように引きつれている状態も注意が必要です。これは近くに乳がんができ、皮膚が引っ張られることで現れる所見である可能性があります。このような症状がある場合には受診をお勧めします。
乳頭から分泌
授乳をしていないのに母乳のような白い液体が出る。または透明だったり少し黄色く色がついていたりと様々な所見があります。多くは乳腺症が原因であり放置して問題無いことがほとんどですが、明らかな出血である場合は背景に乳管内乳頭腫や乳がんが隠れている場合がありますので、受診をお勧めします。出血ではない場合にも、分泌物を病理検査に提出しがんによるものかどうかの確認も行っています。
乳頭のただれ
稀な病気(乳がんの1%程度)ですが、「乳房パジェット病」と呼ばれる疾患があります。乳輪・乳頭の皮膚が赤くただれ、かさぶたのような所見がみられます。最初の内は単純な皮膚炎として軟膏などで治療されることも多いと思われます。なかなか改善しない乳頭・乳輪のただれがある場合には受診をお勧めします。
保険診療と自費診療
- しこりや痛みなどの症状がある方(保険診療)
- 他検診施設で異常を指摘された場合の2次検診(保険診療)
- 無症状の方の乳がん検診(自費)